『八月十六日』

  • 2012.03.30 (金)
  • 0

『八月十六日』    (詩集『それぞれの空の点』著・絵 武藤絵美/日本文学館)

 

 

その人が空に消えたのは
しずかな夏の日のことだった

 

私に沢山の傷を残した人だけれど 嫌っていた訳ではなかった
それはあまりに昔のことで
幼かった私の手を引いて 遊んでくれた頃のことを よく思い出していたから

 

けれど口にはしなかったせいで 周りは その人を恐れていたせいで
私も同じように むしろそれ以上に 憎んでいるのだと信じられていた

 

別の理由で帰れなかった私を 久し振りに見て
一度 名前を忘れたことがあった
私はそれを当たり前だと思ったし
それなのによく 嬉しそうに喜んでくれた と思った

 

思うように手足が動かなくなっていくことを
認めたがらない頑固な人だった
その強さを無視するように 身体や神経は衰えていった

 

私が最後に会いに行ったときに 改めるように 時間を置いて
心からの笑顔を見せてくれた
会いに行けなかった理由を「わかっている」とでも言うように
私のことを「忘れてないよ」と言いたいように

 

大丈夫、私は解っているんだよ
あなたが申し訳なく思うようには
私はあなたを恨んだりしていない
沢山の楽しかった記憶を 思い出していたのに

 

あのとき、名前を呼びたかったことくらい
わかっているよ

 

失っていくものを見送ることが
どんなに恐かったか
わかっているよ

 

その全ても、もう、いいんだよと 許すようにその人は笑った

 

 

その人の青春と憎しみと悲しみ全てを詰め込んだ
戦争というものが終わった日を数えた 次の日だった

 

まだ幼かった頃別れたという
その人の母の 優しかったという母の
眠りについた まったく同じ日を選んで
その人は天に召された

 

儀式の日、空は合わせたように嵐のように泣いて
別れの頃
空高く、青く暑い晴れをもたらした

 

青く清い、別れをした

 

 

 

『slide』

  • 2012.03.28 (水)
  • 0

『slide』    (詩集『それぞれの空の点』著・絵 武藤絵美/日本文学館)

 

 

空調の利き過ぎた店内から
通りを見渡した
ブラインドの隙間からは
半分に遮断された西日が届いていた

 

揺らぐ衝動を理解しようと
感情の全てを言葉にしようとした昔
いつの間にか理屈めいて
それは鎖になって
足を捕られては立ち尽くした

 

理由付けて理解したように
物事を語ることが嫌になって
何か見落としてしまう気がして

 

遠退いた言葉というもの

 

それでも あるいはそれは
ただ流れていく時間を
小説のように彩って
人との距離を描き出す
そういう趣も持っていたのだと

 

振り返って思えた
不器用に綴った言葉の中には
鮮やかな君がいた

 



『tart is gem cup』

  • 2012.03.26 (月)
  • 0

『tart is gem cup』   (詩集『それぞれの空の点』著・絵 武藤絵美/日本文学館)

 


ビニールやナイロンの傘が開いて
波間を行く
今日は雨

 

結露で曇るショーケースを覗いて
クランベリーの宝石が光るタルトを注文する

 

宝探しの地図に憧れて
ノートの切れ端に書いた幻の島を
コーヒーに浸して色を付けたのは
もう遠く昔のこと

 

遊覧船のひとつになって
気温の曖昧な雨をさ迷う
見付からなかった宝石を
日常のなにかに置き換えて

 

水玉、花柄、ペイズリー、チェック、
私はストライプの帆を開いて
波間へ漕ぎ出す
今日は雨

 

ガーネットに見立てた深紅を乗せた
タルトを味わうまで あと少し

					

『星』

  • 2012.03.26 (月)
  • 0

『星』       (詩集『それぞれの空の点』著・絵 武藤絵美/日本文学館)

 

 

海沿いの街に似た
粘り気のある湿気の風が
それでも柔らかく吹き撫でる
七月の終わりの夜

 

朝靄のように
そこら中を埋め尽くすようにして 湧きうねっていた夏雲は
忙しく流れ去ったあとで

 

漆黒のような空に
一つ凛と涼しい星

 

ふと、人が言葉を断って壁を作るのは 守るべき傷痕を庇うためで
それに打ち勝った道のりの誇りのために 言葉で括られることを強く拒む

 

「あなたの知らない、痛みと強さがある」
交差する人の流れへ 沈黙に込めて応える

 

誇りを輝きに
夜空の星に背を正す

『透夏』

  • 2012.03.26 (月)
  • 0

『透夏』   (詩集『それぞれの空の点』著・絵 武藤絵美/日本文学館)

 

失ったような透明の身体を
風も日差しも通過していく

 

心地良いくらいの喪失感の中を
夏が満ちていく
絶好の追い風が背を押す

 

やっと蝉がむせび鳴いた
夏らしい夏に 積乱雲の影は無く
冬に似た 溶け広がる西の明かりが在った

 

何を求めていたか
忘れて良いような気がしたある日

 

淋しさや劣等感や
それによる欲も虚しさも
熱に焦がされて消失したように
理由のない幸福が胸を満たした

 

まだ迷い行く道の途中
何かに安堵した 不思議なとき

『open sky』

  • 2012.03.20 (火)
  • 0

『open sky』   (詩集『それぞれの空の点』著・絵 武藤絵美/日本文学館)

 

目を閉じる、公道の音が聴こえる

 

動き出した夏の雲が
無数に空に散り
聳える高層のビルに映り込んでいる

 

湿気を帯びた空気が
街の色合いを強めて
激しい光量が
輪郭を固くする

 

何を数えた訳もない 何歩目かのある夏のとき
突然に空が高くなることを
君のせいにした

 

今日の風は止みそうにない
太陽も、消えそうにない
目を閉じても 聴こえて来る鳴り止まない夏の音を

 

その力強さを頼りに
言葉をすこし、連ねてみる

 

今日が、明日にとっての何なのか
私が今、どこに居るかなんて
何も知らないままで

“Kenil’s Night Vol.8 ” ありがとうございました。


こんばんは。
新しく始めましたこちらのblog、まだまだ使い慣れておりません。大丈夫かしら。

13日(火)@新宿MARZ Bar “Kenil’s Night Vol.8 ” での展示、無事終了いたしました。
ご報告遅くてごめんなさい。
そして、告知もギリギリになってしまってすみませんでした。

カレー、本当美味しかったです。
DJや弾き語りを聴きつつカレーを頂き、ジェンガで遊ぶ、
というとてもまったり楽しい時間でした。
ジェンガ面白かったです-_-。
お声下さったKenji くん、ご一緒させて頂いた皆々様、ありがとうございました!
また参加させて頂けるよう、精進してまいります。
よろしくお願いいたします。°

次回巡回展はこちら。
—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。
詩集『それぞれの空の点』原画展
『Drama consists of the anchor points. vol.7』
4月3日(火)~4月22日(日)
山梨県Bar Slow(オーガニックカフェです)
火~金 12:00~21:00
土日祝 12:00~18:00
 ※月曜定休

山梨県甲府市にある、バールスロー(Bar Slow)というオーガニックカフェで、壁面展示をさせて頂きます。
お肉や魚を使わない料理を提供しているカフェです。
お茶やお食事をしながら、ゆっくりと絵に触れて頂けたらと思います。

オモイオモイの募金缶+富岡町サポーターステッカー&缶バッジ、
設置頂けることになりました。
ご協力ありがとうございます。
よろしくお願いいたします。
—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。
来月に巡回展を控えて、まだDMお届け出来ずごめんなさい。

一般流通を終えた詩集『それぞれの空の点』から、すこしずつ幾つか、掲載の詩をこちらで紹介していこうと思います。
(詩は次の記事へ)

ふわりと読んで頂けたら幸いです。

健康に生きましょう。
また。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

blogはじめます。


新しくblog始めました。

仕様、慣れておりません、お見苦しいところありましたらごめんなさぃ。
よろしくお願いいたします。

 

詩集『それぞれの空の点』が刊行されたのが昨年の3月1日でした。
8日からの、巡回最初の原画展最中に、あの大震災が起きたのでした。
あれからもう、1年経ちますね。

 

多くの尊い命が失われた日。
皆戸惑い、不安を重ねた日。
委ねていた平穏を失った日。

 

築き上げて来たものを、理不尽な理由で手放した方も多かったことでしょう。
それぞれが自分に明日を問い。
守るべきものは何だろうと、強く問うきっかけになったのではないでしょうか。

 

私は、これまでを懸命に生き抜いた皆さんの苦労を知ることなく。
時折、その本当の痛みや苦しみに足りぬ想像をするばかりでした。

 

10年、20年と経った先にも、あの日の傷は消えることはないのでしょう。
それでも、被害に遭われた皆さんに、「やっとここまで来れたんだ」と、歩みを誇れる明日なのだと思います。

 

非力な私ですが。
沢山の人に再会出来、出会い、受けた刺激を糧にしながら。
明日を行くための、前向くための思いを形に。
制作、続けて行きます。

 

『それぞれの空の点』の一般流通は終了しています。
巡回展は、機会を頂けまして、続けて参ります。 (※記事の後ろに告知いたします)
物販置ける会場でのみではありますが、売上げ50%を支援金とする活動、続けて行きます。
富岡町への支援、「オモイオモイの募金缶」会場設置、同じく続けて参ります。
よろしくお願いいたします。

 

では、展示の告知を。
—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。
3月13日(火)
新宿MRAZ(ライブハウスです)
open18:00 / start 18:00
“Kenil’s Night Vol.8” という、イベントに展示参加させて頂きます。
ギャラリーとは異なる印象の照明になると思いますので、
展示内容は詩集の原画に限らず、ピックアップしようと思います。
まだ検討中ですが。
美味しいカレーが出るそぅですょ♪
当日、オモイオモイの募金缶+富岡町サポーターステッカー&缶バッジ、
設置頂けることになりました。
お誘い、ご協力ありがとうございます!
よろしくお願いいたします。
—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。

 

—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。
詩集『それぞれの空の点』原画展
『Drama consists of the anchor points.  vol.7』
4月3日(火)〜4月22日(日)
山梨県Bar Slow(オーガニックカフェです)
火〜金 12:00〜21:00
土日祝 12:00〜18:00
 ※月曜定休
山梨県甲府市にある、バールスローというオーガニックカフェで、壁面展示をさせて頂きます。
お肉や魚を使わない料理を提供しているカフェです。
お茶やお食事をしながら、ゆっくりと絵に触れて頂けたらと思います。
お店の詳細はこちら。www.bar-slow.com/index.html
オモイオモイの募金缶+富岡町サポーターステッカー&缶バッジ、
設置頂けることになりました。
ご協力ありがとうございます。
よろしくお願いいたします。
—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。

 

—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。
詩集『それぞれの空の点』原画展
『Drama consists of the anchor points.  vol.8』
5月28日(月)〜7月5日(木)
CANADA Rufus Lin Gallery(ルーファンス・リン日本美術ギャラリー)
カナダに在る、日本にまつわる美術を紹介展示しておられるギャラリーの一角に、
展示させて頂けることになりました。
こちらは、物販や募金缶の設置は出来ないそうですが。
原画を通して、メッセージを与えられたら、と思います。
私自身まだ会場に行けるか未定であります。(ぜひ行って来たいです。)
遠いですが.. よかったら是非。
ギャラリーの詳細はこちら。rufuslingallery.com/
—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。—–。

 

ご都合合いましたときには是非、足を運んで頂けると幸いです。
確かな明日でありますように。
健康に生きましょう。
ではまた。